日本はインフルエンザの治療薬が世界のなかでも充実している国のようです。
流石、医療先進国である日本、世界の国から医療を受けに日本にたくさんやってきます。
最近、また、新しい作用機序を持つインフルエンザの治療薬が製造承認申請されそうですね。
新しいインフルエンザ治療薬とは そのメリットと効果について紹介します。
Contents
新しいインフルエンザ治療薬とは
既存のインフルエンザ治療薬はほとんどがノイラミニダーゼ阻害薬である。
1つだけパンデミック対策として、政府がいざというときに投入する予定であるRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬が存在する。
昔、アマンタジン(商品名:シンメトレル)が唯一のインフルエンザ治療薬になっていました。
今ではほとんどインフルエンザウイルスが耐性をもっていて効き目がない薬になってしまっています。
(もともと、どちらかと言えばパーキンソン病の治療薬のイメージが強いですね。)
私の感覚では、アマンタジンがインフルエンザ治療薬だなんて一度も思ったことがなかったですけどね。
アマンタジンはA型インフルエンザウイルスのM2蛋白を阻害して、ウイルスが脱殻することを抑制してウイルスの増殖を抑制します。
B型インフルエンザのM2蛋白には結合しないので効果がない。
副作用は睡眠障害や幻覚などがある。
現時点でよく使われているノイラミニダーゼ阻害薬には次の4種類あります。
タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ。
これらの薬は、ウイルスが宿主細胞から別の細胞へと感染を広げる際に必要となるノイラミニダーゼという酵素(糖タンパク質)を阻害することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。
1)リレンザ
世界で初めてのインフルエンザ治療薬(アマンタジンは別として)でグラクソ・スミスクライン社(そのころはグラクソ社)が販売し始めました。
2000年12月に日本で発売され、保険適応は2001年2月から。
内服では効果が良くないと理由で、吸入剤として製品化されている。
1日2回で5日間吸入。
吸入剤は副作用が出にくいかも。
2)タミフル
スイスのロシュ社により販売されている。
2001年2月より日本でロシュグループの中外製薬より販売され、保険適応も2001年2月より。
内服薬であることで、投与がしやすく、”異常行動”が取りざたされるまでは処方量も多かった。
使用量が多いためか耐性ウイルスの出現が早い。
1日2回で5日間内服
3)イナビル
日本の第一三共により開発され発売される。
日本で2010年10月より発売され、保険適応も2010年10月より。
吸入剤で1回で済む。(厳密には2~8回を同日に吸入)
1回で済むというのは良いことだが、なかなかどうしてその1回が吸えない子供さんがおおいことか。
吸入剤のため、副作用が少ないような気がします。
4)ラピアクタ
アメリカのバイオクリスト社が開発し、日本の塩野義製薬がライセンスを取得した。
日本では2010年1月から塩野義製薬より販売され、保険適応は2012年6月より。
他のノイラミニダーゼ阻害薬より強力とされている。
点滴剤のため経口投与や吸入投与ができない場合に使える。
さて、RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬としては1つが製品化されています。(政府の備蓄だけどね)
アビガン
富山大学工医学部と富山化学工業が開発、富山化学工業が発売。
2014年3月に条件付きで製造承認を取得、2017年2月厚労省が備蓄を発表。
ノイラミニダーゼ阻害薬と違って、インフルエンザを細胞内に閉じ込めるのではなく、ウイルス感染した細胞内に入って、ウイルスの増殖を阻害します。
なので、発症から48時間以内という制限なく使えます。
エボラ出血熱の治療薬としても期待されています。(インフルエンザウイルスとエボラウイルスが性質などが似ているため)
異なるタイプのインフルエンザ治療薬であることにより、動物実験で催奇形性が指摘されているにもかかわらず、政府の備蓄の中に追加されることになった。
これらがこれまでのインフルエンザの治療薬ですが。
今回塩野義製薬が開発した新薬は、新規キャップ依存型エンドヌクレアーゼ阻害剤というものである。
2017年度内に申請されるかもしれません。
そのメリットとは
新規キャップ依存型エンドヌクレアーゼ阻害剤
新しいインフルエンザ治療薬のメリットとしては、
1)内服で1回投与で済むこと。
簡単に投与できる内服という剤型で、それも1回でOK。
これは、患者さんに喜ばれるメリットですね。
特に子供さんに使えればいいですよね。
イナビル吸うの嫌がっていた子供の顔が浮かびます。
2)副作用の発現率が低い
タミフルと比べて有意に低い副作用発現率を示したと報告されている。
今の段階では副作用が少ないようです。良好な安全性を示しているようです。
効果について
タミフルカプセル75mgを1日2回5日間投与した場合と比べて同程度の効果が得られたとの報告がある。
1回の服用でも同程度の効果がもたらされたということは、明るい材料ですね。
まとめ
インフルエンザウイルス(特にA型)は変異を容易に起こして、薬の作用をかいくぐろうとします。
これからも、より安全で、より効果のある薬の開発を次から次へと行っていかなければなりません。
新規キャップ依存型エンドヌクレアーゼ阻害剤にも期待したいですね。