赤ちゃんにとって母乳は大切な栄養源であります。また母乳の研究がすすんだことで母乳が粉ミルクなどに比べて優れている点がたくさんわかっています。
その母乳はひとたびやめてしまうと、ホルモンの変化などにより再開することは困難になるようです。(また、急にやめると乳腺炎などのトラブルにみまわれることもあるようです。)
そんな有益な母乳を薬を服用することで、やめてしまわないようにしなければなりません。
授乳中に服用するかぜ藥について、安全と思われるものとそうでないものについて解説します。
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授乳中に服用するかぜ藥について
基本的に、授乳中の場合はできるだけ、かぜなどにかからないように日ごろから気を付けることが大事です。
でも、イソジンのようなヨウ素の入ったうがい薬は続けるべきではありません。
水でうがいする習慣をつけるようにしましょう。
水で充分です。(以前、ある医師がデーターをとって、ほとんど効果が変わらないと報告してくださってます。)
マスクを着用したり、かぜをうつされる可能性のある場所には近づかないなど、まずはかぜにかからないよう努力しましょう。
それでもかぜにかかってしまったら、状況に応じて薬の選択をする必要があります。
それには、お母さんの身体のこと、お子さんの身体のこと、すべてを考えて判断する必要があります。
(今現在わかっていることから、情報を提供いたします、日々研究でいろんなことが解明されていく場合があり、そのことで今後情報に変化がでてくるかもしれません。)
まずお子さんの月齢はどれくらいなのでしょうか。
生まれて間もない赤ちゃんほど母乳に対する依存度が高いので注意する必要があります。
生後6ヶ月にもなると肝臓や腎臓の働きも整いつつあるので、身体の順応性が高まり、安心度が高まってきます。
また、お子さんが基礎疾患を持っているのかでも事情が変わってくることがあります。
母乳育児を妨げるため鎮静作用のある薬剤は避ける(第一世代の抗ヒスタミン薬など)
かぜはウイルスが原因ですので、もともと細菌に対する抗生物質は効き目がありませんし、早く治すこともできないです。(二次感染で肺炎などになっている場合は別ですが。)
できれば抗生物質は服用せず、熱や咳などの困っている症状のみに効く薬剤で、よく子供に使われるような薬剤を選んで、医療機関などで処方してもらった方が安心でしょう。
あとは、栄養をつけて、安静にして治すようにしましょう。
服用の参考としては、薬の吸収のパターンから授乳直後というのは一番よくて、次に、授乳直前は服用しても吸収されるまでのタイムラグがあって適しています。
全てのことは、個人差がありますので、以上のことを参考に考えていく必要があります。
効果とリスクのバランスが大事でしょう。
安全と思われるもの
かぜの場合で、まずは安全と思われていて推奨されているものの一覧を示します。
(国立成育医療研究センターなどより)
非ピリン系解熱鎮痛薬
カロナール(アセトアミノフェン)
酸性抗炎症薬
ブルフェン(イブプロフェン)
ボルタレン(ジクロフェナク)
抗生物質
サワシリン・パセトシン(アモキシシリン)
ケフラール(セファクロル)
ケフレックス(セファレキシン)
ジスロマック(アジスロマイシン)
エリスロシン(エリスロマイシン)
クラリス・クラリシッド(クラリスロマイシン)
タリビッド(オフロキサシン)
クラビット(レボフロキサシン)
ホスミシン(ホスホマイシン)
抗ウイルス薬
タミフル(オセルタミビル)
抗ヒスタミン薬
アレグラ(フェキソフェナジン)
クラリチン(ロラタジン)
次に個々の薬剤について大分県「母乳と薬剤」研究会の判断によるものの中でそれぞれの範疇で上位評価を示しました。
鎮咳薬(咳止め)
メジコン(デキストロメトルファン)・・・有害事象の報告がない、小児に適応があり、移行したとしても問題にならないと思われる。
アスベリン(チペピジンヒベンズ酸塩)・・・有害事象の報告がない、小児に適応があり、移行したとしても問題にならないと思われる。
アストミン(ジメモルファンリン酸塩)・・・有害事象の報告がない、コデイン類より危険性が少ないと予想される。
去痰薬(たんをきる)
ムコダイン(カルボシステイン)・・・有害事象の報告がない、小児に適応があり、移行したとしても問題にならないと思われる。
ムコソルバン(アンブロキソール)・・・有害事象の報告がない、小児に適応があり、移行したとしても問題にならないと思われる。
ビソルボン(ブロムヘキシン)・・・有害事象の報告がない、小児に適応があり、移行したとしても問題にならないと思われる。
アレルギー治療薬(鼻水をとめる)
アレグラ(フェキソフェナジン)・・・中枢への移行は少なく通常の治療量では問題ない。
クラリチン(ロラタジン)・・・中枢への移行は少なく通常の治療量では問題ない。
ジルテック(セチリジン)・・・中枢への移行は少なく通常の治療量では問題ない。
非ピリン系解熱鎮痛薬(痛みをとる、熱を下げる)
カロナール(アセトアミノフェン)・・・母乳中への移行は極少量で、母乳育児に適している。
酸性抗炎症薬(痛みを止め、熱を下げる)
ブルフェン(イブプロフェン)・・・母乳中への移行は極少量で、母乳育児に適している。
ボルタレン(ジクロフェナク)・・・母乳中への移行は少量で、母乳育児に適している。乳児がインフルエンザなど罹患時は使用回避。
総合感冒剤(鼻水を止め、熱を下げ、痛みをとる)
PL顆粒(サリチルアミドなど)・・・各成分ともに母乳中に移行する、通常量で長期使用を避ければ授乳との両立可能。
抗生物質
サワシリン(アモキシシリン)・・・母乳中への移行は少量で、母乳育児に適している。
ビクシリン(アンピシリン)・・・母乳中への移行は少量で、母乳育児に適している。
ケフラール(セファクロル)・・・母乳中への移行は少量で、母乳育児に適している。
メイアクト(セフジトレンピボキシル)・・・母乳中への移行は少量で、母乳育児に適している。
セフゾン(セフニジル)・・・母乳中への移行は少量で、母乳育児に適している。
クラリス・クラリシッド(クラリスロマイシン)・・・母乳中への移行は少量で、母乳育児に適している。
タリビット(オフロキサシン)・・・母乳中への移行は少ない、在的関節異常のリスクはあるが、短期間(1~2週間)の投与は許容できる。
インフルエンザ治療薬
タミフル(オセルタミビル)・・・ヒトにおける検討は少ない。母乳中の量は母親の体重換算量の0.5%であったとの報告がある。
国立成育医療センター、米国小児科学会、東京病院薬剤師会など複数の情報をもとに判断されていますが、大規模な臨床研究がされているわけではなく、まだまだ充分な情報がないのが実情です。
その上での判断であることと、薬剤の体内動態などは個人差もあることから、1つの判断材料として取り扱うようにしましょう。
お子さんの様子をよく観察して、いつもと違う(ぐずる、とか、泣き止まないなど)ようならかかりつけ医に相談することをおすすめします。
安全と思われないもの
医療用のかぜに処方されうる薬剤は状況によって使うことが可能なお薬が多いですが、
市販のかぜ藥の中には、多種類の薬剤が含まれている場合がありリスクも膨らみます、また、その中には眠気を催すものなどが含まれている場合もあり注意を要する時があります。
できれば、医療機関を受診して、今、授乳中であること、赤ちゃんの月齢とか(基礎疾患があれば基礎疾患について)を医師に告げて、できるだけ少ない薬で、不都合な症状だけを抑えていく方が良いように思います。
まとめ
まだまだ、充分なデーターがないので、できるだけリスクの少ないものを選択する方が良いです。
効果とリスクをてんびんにかけて、できるだけ少ない種類の薬剤で不都合な症状だけを抑えるように服用することが求められます。
赤ちゃんにとってすごく大事な母乳をあげることで、すくすくと成長することが期待できます。
授乳を続けるメリットは大きなものです。