2006年に初めてマウスiPS細胞が生まれ、2007年11月にはヒトiPS細胞の作成に成功。
山中教授のグループが成し遂げてから十数年経ちました。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)の研究は日夜すすめられています。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)とはどういうものか、大脳白質の脳梗塞でリスクが高まる疾患の治療に、
群馬大学大学院医学系研究科の石崎泰樹教授らの研究グループが挑んでいるとの報告がありました。
Contents
人工多能性幹細胞とは
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は体細胞への数種類の遺伝子を導入することにより、ES細胞(胚性幹細胞)のように非常に多くの細胞に分化できる分化万能性と、分裂増殖を経てもそれを維持できる自己複製能を持たせた細胞のことである。
山中伸弥教授ひきいる京都大学の研究グループによってマウスの繊維芽細胞(皮膚細胞)から初めて作られた。(以上、Wikipediaより抜粋)
iPS細胞の小文字のiには山中の想いが込められている、当時流行っていたアップル社のiPodのように普及してほしいという想いである。
iPS細胞のiPSとは、英語のInduced Pluripotent Stemの頭文字です。
体を構成する様々な細胞に分化誘導できるES細胞を研究などに使うには倫理的な問題などがともないます。
なぜなら、ES細胞は発生初期の胚からしか得ることができない、
だから、胚を採取する際に(受精後6、7日目の胚盤胞から採取する)母体に危険が及ぶことや、個体まで生育しうる(子どもになる)胚を実験用に使って失ってしまうことが起こります。
そして、患者さん由来のES細胞でなければ、作られた組織や臓器を移植した場合に、拒絶反応が起きるという問題がある。(採取しにくいES細胞だからこそ)
そのために、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の研究は進められたとも言えます。
体細胞に多能性誘導因子によりリプログラミングを起こさせ人工多能性幹細胞(iPS細胞)へと変化させる。
これに使われる体細胞は、6歳から81歳までの様々な年齢の日本人の皮膚細胞になります。
この人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用い、
再生医療(病気やケガなどで失われてしまった機能を回復させることを目的とする治療法)や、
病気の原因を解明し(患者さんの体細胞からiPS細胞を作り、それを神経、心筋、肝臓、すい臓などの患部の細胞に分化させ、その患部の状態や機能がどのように変化するかを研究し、病気の原因を解明すること)、
新しい薬の開発(人体ではできないような薬剤の有効性や副作用を評価する検査や毒性の試験が可能になり、開発が大いに進む)、
に応用しようとしているのです。
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脳梗塞を改善することができるのか
群馬大学大学院医学系研究科の石崎泰樹教授らの研究グループは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った血管の細胞を、脳梗塞を起こしたラットの大脳白質に移植したところ、症状が大きく改善したとの研究結果を得た。
このことは今後の中高年のうつ病や初期の認知症への新たな治療法への道筋になると期待されている。
大脳白質は、大脳の中の主に神経線維が束になって走行している領域である。
神経細胞(ニューロン)が多く含まれる灰白質と比べて、光の乱反射度が高く白く輝くので、白質と呼ばれる。
白質病変が起きると伝達速度が低下し、末梢でとらえた感覚情報は大脳皮質に伝わらなくなるし、
大脳皮質が司令する運動情報も筋肉に伝わらなくなり、麻痺が起こります。
これまでの研究で、血管内皮細胞の移植が大脳白質の脳梗塞に有効だとわかっていたが、
個々の患者に適合する細胞を作ったり、手に入れたりすることは困難だった。
再生医療の分野で研究が進む人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用することで、この課題を克服できるようになった。
今後、脳梗塞を改善させている仕組みをより精緻に解明できれば、移植より負担が少ない注射などの方法で、治療の可能性が広がる。
研究次第では5~10年後に医療の現場におとしこめるのではと期待している。
今回の研究成果は国際神経化学会誌「ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー」に掲載されている。
今後の研究が期待されます。
まとめ
加齢黄班変性をはじめとする、いくつかの疾患に対して、
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った臨床研究や治験も本格的にすすめられようとしています。
今回の群馬大学大学院医学系研究科の研究も含めて見守ることにしましょう。