日本において、9月26日に、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として、ビルトラルセンの製造承認申請が行われた。
難治性の疾患に希望をもたらすかもしれない期待の新治療薬である。
日本発第一号の核酸医薬であることも期待の大きさをうかがわせる。
核酸医薬とは、筋ジストロフィー治療に役立つのかについて考察してみたい。
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核酸医薬とは
核酸医薬とは、ある特定の分子を標的にして、その機能を制御することで治療をする分子標的薬の1つであり、分子量が中程度の代表選手である。
中程度のものとしてはペプチド医薬品も含まれる。
その作用機序は、化学合成により製造された核酸が遺伝子発現というプロセスを介さずに直接生体に作用することによる。
分子量が中程度(数千程度)であるので細胞膜を通過できるので細胞内タンパク質を制御できる。
このことがモノクローナル抗体で治療困難であった疾患に期待がもたれている根拠である。
分子量が大きいモノクローナル抗体は細胞内に到達しない。
筋ジストロフィーとは
筋ジストロフィーにはさまざまな種類がある。
その中で最も頻度が高いものはデュシェンヌ型とベッカー型というものです。
筋ジストロフィーは遺伝子の変異により、筋肉が壊れやすく、再生されにくいという症状をもつ疾患である。
症状が出始める年齢や、症状の出やすい場所は、種類によってさまざまです。
筋力の低下により身体を動かすことが難しくなったり、呼吸・飲み込み・血液循環などに機能障害がでたり、
内臓・目・耳・脳などに機能障害や合併症を伴うこともあります。
これらの機能障害により、呼吸器感染が重篤化したり、転倒などによるケガなどを主に注意しなければなりません。
筋ジストロフィーは人口10万人あたり20人前後の患者がいると推定できます。
今現在は、根本治療薬がないので新薬に期待が寄せられている状態です。
筋ジストロフィー治療に役立つのか
核酸医薬は、通常、筋組織には取り込まれないが、筋ジストロフィーのように筋細胞の壊死・再生が活発な状態では筋組織に効率よく取り込まれる。
なので、そういう意味での治療を妨げるものはない。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋繊維の膜にあるジストロフェンというタンパク質の遺伝子変異が原因となっています。
そのジストロフェン遺伝子には79個のエクソンがあります。
エクソンとは遺伝子の塩基配列のうち、タンパク質を合成するための情報を持っている部分のことです。
そのエクソンのところどころが遺伝子的に変異していてタンパク質合成が阻害され筋力が低下することになります。
ビルトラルセンの作用機序であるエクソンスキッピングとは、簡単に表現すると、ジストロフィン遺伝子に欠損があることでタンパク合成をやめてしまうのを調整して、合成できるようにすることである。
途中で欠損のあるエクソンの影響でタンパク合成がすすまないのなら、その部分をとばして(スキップして)なかったことにしてとりあえずタンパク合成をすすめようというものである。
このような作用機序のため、進行を遅らせることができるとされているが障害がすすんだものをもとに戻すことはできないと言われている。
だから、発症していないうちに使うことが求められます。
ビルトラルセンはエクソン53をスキップするのでデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者の10%ほどに恩恵を与えるだけです。
また、残念なことに心筋細胞には作用しないことがわかっている。
今回のビトラルセンは日本で承認された核酸医薬としては4番目になる。
(国内開発では第1号)
これがとっかかりで次々と開発がすすむことが望まれています。
まとめ
核酸医薬は新しい治療薬として期待されています。
日本にはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者は4000人ほどいます。
その10%ほどに治療効果が期待できるビルトラルセン。
この新薬が承認されることで、次の核酸医薬開発が促進してデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者の治療がよりすすむことを期待します。